ゼニゴケ研究で博士 近大院生の十川太輔さん

細井学長㊧から学長賞を受け取る十川さん

世界初となる「植物精子の超低温保存」などの論文を発表した近畿大学生物理工学部博士後期課程3年の十川太輔さん(28)は18日、和歌山県紀の川市西三谷の和歌山キャンパスで博士号の学位を受けた。また細井美彦学長から学長賞が授与された。

十川さんは中学生の頃、和歌山市出身で世界的な博物学者の南方熊楠に影響を受け、カビや粘菌に関心を持つように。

同大では生殖や生命、受精を中心に研究。ゼニゴケの精子を1分間ごとに1℃の速度でマイナス80℃まで冷却し、その後はすぐに液体窒素中(マイナス196℃)に浸した。超低温処理後に常温で解凍すると精子は保存前の67・6~75・5%の生存率、54・3%の平均運動速度を維持。

超低温保存した精子をメスの野生株と交配したところ、多数の胞子が形成され、胞子は正常な葉状体に成長。これらの結果から、超低温保存した精子は全体的に平均運動速度は低下するものの、受精能を維持していることが明らかとなった。また、他の植物精子への応用にも挑戦。ゼニゴケと比較的近い、苔類ジャゴケ属ヒメジャゴケでも同様の研究を実施。超低温保存後でも一部のヒメジャゴケ精子は鞭毛運動を維持した状態で遊泳。ゼニゴケ精子の保存技術が他のコケ精子にも利用できることを見出した。 研究生活を振り返り、「しんどいことも多々あったが頑張ってきて良かった。学長賞はびっくりしました。非常に光栄です」と喜んだ。

学業だけでなく、同大学消防団の学生代表としても積極的に活動。同市内の河川敷などでの放水訓練などに参加し、火災の怖さや防災の大切さを感じるとともに、コミュニケーションの重要性を肌で感じたという。「いざ災害が起こったら多くの人はパニックになると思う。日頃からのコミュニケーション、とっさの声掛けが大切だと思う」と力を込める。

修了書と学長賞のトロフィーを手に十川さんは「感無量の気持ちでいっぱいです」と笑顔。

4月からは県に採用され農学職として新たな一歩を踏み出す。「自分の考えをしっかり持って研究室や消防団で学んだことを生かせるように精いっぱい頑張りたい」と意気込んでいる。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。