東大先端研と高野山ら協定 人材育成等で

協定書を手にする(左から)平野町長、添田宗務総長、神崎所長

「共生」の精神が息づく密教の聖地・高野山で、宗教や科学、アートをはじめ多分野の人々が話し合い、人間や社会の在り方を見つめ直す場をつくり、学術振興や人材育成、産業振興、活力ある地域づくりに貢献しようと、和歌山県高野町、高野山真言宗総本山金剛峯寺、高野山大学と東京大学先端科学技術研究センター(先端研)は4日、連携協定を締結した。

先端研は、理工系の先端研究から社会科学、バリアフリーなど未来の社会システムに関わる研究まで、多様な研究を積極的に推進。昨年3月には県と包括連携協定を締結し、産業振興や人材育成などで協力した取り組みを進めている。

本年度は、従来の西洋的な人間中心の思想による科学技術の発展の結果、環境破壊などさまざまな社会問題を引き起こしてきた歴史を踏まえ、自然との共生など東洋的思想で感性を育み、科学技術と融合させることによって課題解決につなげるため、新たに「アートデザイン分野」を設立した。

2016年から先端研の所長を務める神崎亮平さんは、高野口町(現橋本市)出身の世界的な生物学者。弘法大師空海により、自然界の全てに仏性を見る仏教の共生の精神が1200年にわたり息づく高野山と連携したいと考え、県の協力により今回の協定実現に至った。

協定は、高野町、金剛峯寺、先端研の3者間、高野山大と先端研の2者間の二つ。締結式は金剛峯寺新別殿で行われ、神崎所長、平野嘉也町長、添田隆昭高野山真言宗宗務総長、乾龍仁高野山大学長の4人がそれぞれ協定書に署名した。

添田宗務総長は、弘法大師の密教について、神道をはじめさまざまな教えを寛容に受け入れ、包摂してきたとし、「あらゆる学問領域を包摂する先端研の取り組みに通じるものがある」と述べ、今後の連携に期待。神崎所長は「高野山は私たちの『心のふるさと』のような場所。科学技術、アート、デザイン、宗教も含め、自然と共存する社会を高野山と一緒に考え、形にしていきたい」と話した。

協定に基づき4者は今後、先端研アートデザインラボラトリーの知見を導入した地元活性化の推進や、特別講義、フィールドワークなどを通した人材育成、相互訪問による交流、精神涵養(かんよう)のための場の提供などを進める。

平野町長は「古来の町である高野町で最先端のまちづくりをしていきたい」と語り、弘法大師入定1200年となる2034年に向けて、バリアフリー、現代人の心身の不調を癒やすヘルスツーリズムなどにおいて、先端研の知見を生かすことに期待感を示した。

さらに神崎所長は、スイスで毎年開かれているダボス会議のように、世界から多分野の人々が集まり、国際社会に資する対話の場となる「高野山会議」を将来開催したいとの構想も披露した。

締結式では、先端研客員研究員で東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスターの近藤薫さんが記念の奉納演奏を行い、金剛峯寺内の枯山水庭園「蟠龍庭」に、バッハの無伴奏バイオリンのためのパルティータより「シャコンヌ」が響き渡った。

使用楽譜は近藤さんが手書きしたもので、結びの音楽記号・フェルマータを添田宗務総長に書き入れてもらい、完成したものを奉納した

記事元:わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。