県名匠に山上さん 紀州へら竿の伝統工芸士

県名匠に選ばれた山上さん(県提供)

伝統ある工芸品や生活用品などの製作技能を保持し、技術文化の向上に功績がある優れた技術者に贈られる2020年度「県名匠表彰」に、紀州へら竿の製作技術を伝承する和歌山県橋本市の製竿師、山上寛恭(やまうえ・ひろやす)さん(68)が選ばれ、27日に県庁で表彰式が行われる。

紀州へら竿は、100年以上の歴史を持つ経済産業大臣指定伝統的工芸品、県知事指定郷土伝統工芸品。かつて紀の川を使った木材の運搬が盛んで、高野山の宿場町としても栄えた橋本市で、職人たちが意匠を凝らしながら伝統的な製作技術を継承し、天然竹を使ったへら竿は、ほとんどがこの地で生産されている。

へら竿の製作には竹伐り、生地組み、荒火入れ、糸巻き、漆塗り、穂先削りなど細かく分けると130もの工程があり、山上さんはその全工程を約1年かけて一人で手掛ける。しかも、ほぼ全てが手作業であり、繊細で卓越した技術と経験が要求される。

山上さんのへら竿は、伝統の技に工芸品の手法も取り入れ、竿の握り部分に卵殻を施すなどデザイン性や芸術性も兼ね備えている。さらに、見た目だけでなく釣り人のニーズに合うよう釣り道具としての機能美にもこだわり、一本一本丁寧に作られた竿は「一生もの」と絶賛されている。

山上さんは高校卒業と同時に、名人といわれた父・高司さんに入門したが、その年の末に父が亡くなり、叔父・文雄さんのもとで修業を積み、23歳で独立。父の竿銘「こま鳥」を2代目として引き継ぎ、現在に至る。

2016年に県技能賞を受賞し、18年に伝統工芸士に認定され、19年には伝統的工芸品産業功労者等経済産業大臣表彰を受けている。

08年から2年間、紀州製竿組合組合長を務め、各地で展示会や全国ヘラブナ釣り選手権大会を開催するなど、へら竿の普及にも尽力。後継者育成のため、若手への熱心な指導にも取り組んでいる。

熟練の技を持つ技術者としてだけでなく、紀州へら竿の伝統的な製作技術を後世に引き継ぐ重要な役割を担っており、その功績は多大だとして、今回の受賞が決まった。

県名匠表彰は1974年度に始まり、今回が47回目。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。