研究者常駐に区切り 加太の東大地域ラボ

活動報告をする青木助教㊧、川添准教授(左から3人目)ら

和歌山県和歌山市加太地区で地域活性化などの調査研究を行っている「東京大学生産技術研究所川添研究室加太分室地域ラボ」が、常駐の研究者を派遣しての活動を今月末で終え、区切りを迎える。来年以降も地域ラボは存続し、川添善行准教授は「まちづくりは地域の人が内発的に続けることが大切。今まで(地域ラボ)は主にエンジンの役割だったが、発展的に変えていきたい」と話す。15日にはオンラインによる活動報告会が開かれた。

川添研究室は2014年に加太で研究活動を開始。空き家・空き地の住環境調査、住民と観光客の回遊行動の調査をはじめ、秋の海水浴場ににぎわいを創出するため、風車が回るとLEDが点灯する「風灯り」を製作し、浜に並べる小学生らとのワークショップの実施など、地域と密接に関わる活動を展開してきた。

18年3月に生産技術研究所と和歌山市が連携協定を締結し、6月30日に漁師の蔵を改修した地域ラボがオープン。先行して同年4月から川添研究室の青木佳子特任助教が加太に常駐し、20年1月からは市職員の中本有美さんが派遣連携研究員として地域ラボに加わった。

加太地区の連合自治会、漁協、観光協会でつくる加太地域活性化協議会(尾家賢司会長)との密接な連携により、住民と協力し、地域の課題やニーズを把握しながら研究を推進。小中学生への授業、他大学との研究交流、加太の情報発信など多面的な活動を行ってきた。

区切りの活動報告会は、地域ラボと地元の連携により誕生した古民家カフェ「SERENO」で開催。尾花正啓市長、尾家会長はじめ地元住民ら約20人が会場に集まり、オンラインで約200人が参加した。

川添准教授は活動報告の中で、加太の特徴として、漁業など古くからの生業を継承した暮らし方、人口減少や空き家などの社会課題が他地域に先行して進行していること、地理的な境界が明確なことなどを指摘。

加太に学ぶ点として、現状を変えたいという地域愛に根差した住民の意識が高く、役割分担してまちづくりに取り組んでいることなどを挙げ、「加太を調査することが、同様の課題を持つ地域の未来のデザインにつながる」と述べた。

2年9カ月にわたり加太に常駐した青木助教は「通いの調査では捉えられない地域の四季折々、一瞬一瞬と住民の思いを、解像度高く捉える」ことに力を入れてきたと紹介。

水産資源を守りながら行われている伝統漁法など、加太の日常的な生活にふれ、「加太地域が大事にしているものを体験を通して理解できた」と話し、さらに〝よそもの〟の視点から地域内で多くの発見があり、口伝だった文化を明文化することや、他分野との協働による多面的な理解が生まれたことを強調した。

川添准教授、青木助教は共に、今後も加太の研究を続けていくとし、川添准教授は「加太のまちが変わっていくにはまだ分室は必要と思っている。今後は、取り組みをどのように実施していくのかという点から関わり、新しいフェーズ(段階)に進みたい」と話していた。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。