鈴木屋敷の復元へ 姓の発祥地で起工式

完成を心待ちにする関係者ら

「鈴木」姓のルーツとされる、和歌山県海南市藤白の藤白神社(吉田昌生宮司)境内東側に位置する「鈴木屋敷」の復元整備工事が始まるのを受け、8月27日、同所で起工式が行われた。関係者は「鈴木姓にとって重要な場所。海南市の文化発信地となれば」と長年の悲願だった本格的な着工を喜び、その安全を祈った。完成は2023年3月を予定。復元整備概算事業費は1億8000万円。

同屋敷は、熊野参詣道紀州路の要所・藤白王子を拠点に、熊野信仰を広めた鈴木氏の屋敷。江戸後期の地誌『紀伊国名所図会』には、旅人が同屋敷で休憩する様子が描かれ、紀伊路を行き交う人々の休憩場所として提供されていたことがうかがえる。

江戸中後期に建てられたとされる木造の現存建物遺構(座敷棟・北北棟)は、老朽化による傷みが激しく、庭も整備が行き届いていない状態で、2015年、同屋敷を含む藤白王子跡が国の史跡指定を受けたことを機に、同神社と「鈴木屋敷復元の会」を中心に計画が本格化。同市と連携して、クラウドファンディング(CF)で寄付を募った他、国や県、同市の補助金も活用し、工事にこぎ着けた。

同日の起工式には同神社や同会、工事関係者ら約40人が参列。吉田宮司が祝詞を奏上し、同会の神出勝治会長が「エイ」と大きな声でくわ入れを行った。

吉田宮司は「藤白王子跡において重要な意味を持つ建物。資料をもとに江戸期の歴史的景観を取り戻したい」と意気込み、神出会長は「屋敷の客間から庭を見て心を癒やしてほしい。立派な建物になる」と期待を寄せた。

同会唯一の「鈴木」である鈴木猛さん(88)は「大変うれしい。全国にいる鈴木姓の皆さんの故郷の館になれば」と笑顔。

現存建物の部材は使用可能な部分は再利用し、失われた建物(玄関棟・北棟)については復元する。建物西側の池泉式庭園や前庭も一体として修理と整備を行う。古写真や江戸期の絵図、発掘調査の成果を元に、江戸中後期の同屋敷の姿をよみがえらせる予定だ。

完成後は、同市の観光と文化交流の一拠点として活用する他、熊野信仰と鈴木姓の研究拠点、参詣道を案内するガイド部門にも力を入れていくという。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。