第三者承継で新たな船出 カイナンスポーツ

気合十分、阪本さん㊧と橋本さん

和歌山県海南市船尾の創業73年の老舗スポーツ用品小売業「カイナンスポーツ」が5日、同市大野中に移転オープンした。43年にわたり店を守ってきた2代目代表の橋本憲三さん(74)から、後継者としてバトンを受け取ったのは阪本勇次さん(31)。親族や従業員ではない第三者が経営を引き継ぐ事業承継で新代表となった阪本さんは「地域の人に愛される店を目指したい」と意気込んでいる。

同店は、橋本さんの義父が1947年に創業。同市や和歌山市の学校の部活動やスポーツ少年団の指定ユニフォームをはじめ、幅広くスポーツ用品を扱う店で、地元からの信頼も厚い。

数年前から体調に不安を感じ始めた橋本さん。2人の娘は関東に嫁ぎ、店の後継者はいない。「せめて名前だけでも残したい」と同市の商工会議所や周りに相談をしていた。状況を知った友人が3年前、阪本さんを紹介。当時会社に勤めていた阪本さんは、休みの日に新規顧客の開拓など店の手伝いをするようになった。

美浜町出身の阪本さんは小学1年生から野球を始め、現在も和歌山市内の軟式野球チームに所属。野球一筋の人生を歩んできた。子どもの頃からスポーツ用品店に通い、地元の子どもたちが集まる空間に憧れ、「いつかスポーツ販売店を」と夢を抱くようになったという。

事業を引き継ぐにあたり、阪本さんは「正直、資金面や収入面で不安はあった」と話す。なかなか折り合いがつかなかったところに、事業承継をサポートする、県事業承継・引継ぎ支援センター(和歌山市西汀丁)が間に入ったことで、話が進み、移転オープンまでこぎ着けた。地元でよく知られた屋号、今までの販売経路や取引先も引き継げることで「ゼロからではないという安心感はある」と阪本さんは笑顔で話す。

店舗は人通りが多い場所に移転。前の店にはなかった試し振りができるバッティングゲージやテレビを設置するなど、地元の人が気軽に立ち寄れる店を目指す。ネーム入れや購入者に合った商品説明など対面販売でしかできないサービスの他、道具の手入れ教室などのイベント、SNS活用にも力を入れていくという。今後1年ほどは橋本さんのサポートを受けながら、地元や取引先との信頼関係を築いていく。地元の人も「『カイナンスポーツ』が残るのはうれしい」と喜んでいるという。

橋本さんは「阪本さんは、ものすごく熱心でチャレンジ精神がある。若い人の感覚でやってもらえれば」とエールを贈り、阪本さんは「この地域にとってカイナンスポーツという名は特別。自分の色を出しつつ、昔の色も残しつつ、今まで以上の店を目指したい」とさらなる躍進を誓った。

 

「後継者不在」が約3割 解決へ支援センター利用を

 

全国で経営者の高齢化や後継者不足が深刻な状況の中、国は円滑な事業の引き継ぎをするための公的な相談窓口である「事業承継・引継ぎ支援センター」をことし4月、全国47都道府県に開設。和歌山でも、親族内承継支援を行っていた県事業継承ネットワークと第三者承継支援を行っていた県事業引継ぎ支援センターが統合し、ワンストップで事業承継の相談が可能となった。

同センターによると、昨年度の事業承継に関する相談件数は157件。内訳は、「後継者不在」の相談が45件、「事業拡張の相談」が49件、「その他事業承継に関する相談」が63件。後継者不在の相談が約3割を占める。相談者は小規模な零細企業が多く、後継者がいないため事業を辞めてしまおうと考える経営者もいるという。2018年は103件、2019年は145件と相談件数は増加傾向にある。

同センターでは事業承継計画策定の支援や後継者探しの手伝い、M&Aマッチングのサポートなどを行っているが、取り組みについてはまだ周知が行き届いていないのが現状。事業者が高齢になってから相談に来ることも多く、本来なら中長期の経営計画を策定した上で事業承継を考えていくことが重要だとし、同センターは「地域になくてはならない事業者を残すことは、雇用の確保、ひいては地域の衰退を防ぐことにつながる。事業をどうしようかなと思ったら、まずは相談に来てください」と呼び掛けている。

問い合わせは同センター(℡073・499・5221)。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。