平時から災害への備え 和大生ら「むすぼら」

給水ボランティアに参加する和歌山大学の学生ら(同大学提供)

東日本大震災の発生から間もなく11年。当時、被災地には全国各地からボランティアが集まり復興支援活動が行われた。近い将来、南海トラフ巨大地震の発生が懸念される和歌山県内でも災害に備えようと、和歌山大学(和歌山市栄谷)は常設の災害ボランティア拠点・災害ボランティアステーション(通称・むすぼら)を開設。防災力の向上を目指し、平時から災害に備えた取り組みをしている。発足から1年。地域住民と連携しながら、来るべき日に備えて着実に歩みを進めている。

同大学は昨年3月11日、地域と価値を創生する「和歌山大学紀伊半島価値共創基幹」(2020年4月創設)の災害科学・レジリエンス共創センター内に「防災・減災・復興の担い手づくり」を目的とした「むすぼら」を発足。東日本大震災や同年に発生した紀伊半島大水害時に有志の学生ボランティアを派遣した実績や、同大学が紀の川北岸地域の高台に位置し、災害時には地域の防災拠点になり得ることから、大学全体で普段から災害に備えようと活動をスタートした。

「むすぼら」は、「結ぶ」と「ボランティア」を掛け合わせた造語で、和歌山弁で「結びましょう」を意味する。学生や教職員の他、サテライトの社会人学生など同大学の構成員なら誰でも参加できる。現在は75人が所属。平常時は、各テーマ別にワーキンググループを作り、災害時の心構えや柔軟な考えを身に付けるため、防災シミュレーションゲームや災害時に役立つロープワークなどのスキル研修などを行う他、イベントなどに参加し、小学生に向けた防災クイズを行うなど防災教育にも力を入れる。

これらの平時からの取り組みと若い学生の力が生かされたのが、昨年10月3日、同市の六十谷水管橋崩落で市北部約6万世帯が断水した時。むすぼらのメンバーを含む同大学の学生79人が5日から延べ4日間にわたり貴志小や野崎西小での給水ボランティアに参加し、水を運搬する手伝いを実施。むすぼらのメンバーで、給水ボランティアに参加した観光学部1年生の柏幸輔さん(19)は「活動を通じて、高齢者が多いことや、エレベーターのない団地があるといった、地域ならではの課題に気付くきっかけにもなった」と話す。柏さんは地元の広島で2018年に発生した西日本豪雨災害の際、知識がなくボランティアへの参加をためらってしまった後悔から、今回はすぐに何かできることはないかと思い立ち、自身の生活も断水の影響を受ける中、ボランティアを志願。「むすぼらを通じて平時からの心構えもできていたのですぐに動けた」と話す。一方で「もっと地域と連携し、その場所に合った活動にも取り組んでいかなければいけないと感じた」とも話し、給水ボランティア後は他のメンバーと共に積極的に自治体の会合や防災研修に参加するなど、地域との関わりを大切に活動している。

むすぼらの世話人で、来年度から災害ボランティア学の教鞭を執る宮定章特任准教授(46)は「『お互いに“初めまして”はやめましょう。事前に知り合っていくことが大事』と話すメンバーもいるほど、普段から地元との関わりは大切。今後も地域の大学として、活動を続けたい」と話している。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。