紀三井寺にケーブルカー 石段登らず参拝

新設されたケーブルカー

名草山の中腹にある和歌山市の紀三井寺は、高齢者や足の不自由な人も参拝しやすいようケーブルカーを新設し、5日から運行を始めた。同寺の石段は231段あり、急なため、バリアフリー化は長年の課題だった。前田泰道貫主は「参拝しやすい環境が整ったことで、たくさんの人とのご縁が結べるように」と話している。

西国三十三番2番札所である同寺の参拝者数は年間20万人ほど。本堂は海抜約45㍍に位置し、これまでも車で本堂近くまで行けたが、駐車スペースは17、18台ほどと限られ、多くの人は石段を登って参拝していた。石段は「結縁・厄除けの坂」とも呼ばれ、縁を結び、厄を払う御利益がある一方、急峻(きゅうしゅん)なため高齢者らが参拝をためらう一因にもなっていた。

同寺は、開創1250年記念事業として、麓から仏殿下までを運行するケーブルカーとそこから約150㍍先のエレベーター(2020年完成)をつなぐ遊歩道を整備しようと計画。寄付や観光庁の「観光地のまちあるきの満足度向上整備支援事業」補助金などを活用し、21年9月から3月にかけて整備。麓から本堂まで石段を登らず、参拝することができるようになった。

ケーブルは一車線で往復する単軌道単線単走式。客車は、スイスのCWA社製で、車体は楼門や多宝塔と同じ「丹」のオレンジ色。正面には白で同寺の紋が描かれている。速度は毎秒1・5㍍で、高低差約30・8㍍を73秒ほどかけて運行する。石段にすると170段分で、残りの61段分は既存エレベーターで上がる。座席は9席あり、車いすの乗り入れも可能。定員は18人だが、密を避けるため当面は10人程度の利用を呼び掛ける。利用者のボタン操作で動き、車窓からは布引の町並みや和歌浦湾を一望する景色を楽しめる。

同日行われた除幕落慶式には、仁坂吉伸知事や尾花正啓市長、信徒総代を務める島精機製作所の島正博会長らが参列。前田貫主が安全運行と観光発展などを祈願し、般若心経を唱えた。

ケーブルカー完成で土産物や喫茶が並ぶ門前町の活性も期待され、岩﨑商店の岩﨑奈穂美さん(57)は「人が増え、にぎやかになればうれしい」と歓迎。この日の正午から運用が開始され、さっそく御朱印帳などを手にした参拝者が列をなした。

ケーブルカー利用者第1号となった大阪府の佐々木順子さん(77)は「足と腰が悪いので、とても楽。おかげで紀三井寺の桜を見ることができた」と笑顔。一緒に乗車した友人の森本和永さん(72)は「以前石段が登れず参拝を断念した友人がいたので、これを機会に誘ってみようと思う」と話していた。

ケーブルカーの料金は往路・復路ともに一般200円。別途参拝料400円が必要。小・中学生と70歳以上は半額。車いす利用者と介助者1人は無料で利用できる。また同寺は「本来の参拝ルートである石段も大事にしたい」との思いから、今後1年間は石段で登る人の参拝料は無料とすることを決めた。

記事元: わかやま新報 ※掲載記事内容は記事提供元で過去に掲載された内容になります。