ヤギの出産、命描く すけのさん2冊目絵本
和歌山県海南市のイラストレーターで絵本作家のすけのあずささん(36)が、2冊目の絵本『やぎのタミエはおかあさん』をBL出版から刊行した。自身が2013年から昨年まで紀美野町で暮らした中で経験した、ヤギの出産を題材にした一冊。子ヤギの命のたくましさと、出産を見守る姉妹の成長を描いている。
すけのさんは大阪府出身。京都精華大学芸術学部マンガ学科を卒業後は、似顔絵や挿絵を中心に手掛けるなど活動。子どもの本専門店メリーゴーランドの「絵本塾」で学び、2020年、第21回ピンポイント絵本コンペで1冊目の絵本の元となる『うみのハナ』で最優秀賞を受けた。
1冊目は、和歌山市雑賀崎に伝わる彼岸の中日に夕日が海に沈む時に花が降るように見える現象「ハナフリ」を見る風習を題材にした『うみのハナ』を出版している。
すけのさんは、これまで雌ヤギの「タミエ」の他に雌1匹、雄1匹、計3匹のヤギを飼っていた。ヤギのお産には3回立ち会ったという。
22年に年賀状にヤギのイラストを描いたことをきっかけに、出版社からヤギを題材にした絵本を描いてみないかと提案があった。すけのさんは、タミエの出産だけでなく数匹のヤギの死も経験したことから、「その時は、ヤギが死んだことのショックが大きく、絵本にするつもりはなかった」と振り返る。
しかし、亡くなった子(ヤギ)の分も絵本での中で「生かそう、生きてほしい」と思うようになり、感動的だった出産をテーマに描くことを決めた。「子ヤギが母ヤギから出てくる姿を隠さず描きたかった」と話し、タミエが苦しむ様子も絵で伝えている。紀美野町の冬の寒さを乗り越え春の草木が芽吹く風景や、生まれたばかりの子ヤギの目の色、常に地面に対して水平な瞳孔など、細かな描写も、水彩絵の具で柔らかく表現している。
昨年、タミエは病気で旅立ち、すけのさんは「亡くなる命は消せば簡単に消えるロウソクの火のように感じた。亡くなったヤギの性格など混ぜ込んで描いた。春の草木の芽吹きとともに新しい命の喜びが伝われば」と話している。
絵本は1650円。TSUTAYAWAYガーデンパーク和歌山店(和歌山市松江)、蔦屋書店和歌山市民図書館店(同市屏風丁)、日高川町のイハラ・ハートショップなどで購入できる。
15日から23日まで海南市船尾の「OLD FACTORYBOOKS」で原画展を開催。約15点が並ぶ。水・木・金曜は午前10時から午後4時、土・日曜は午後5時まで。月・火曜休館。
記事元:わかやま新報
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