廃旅館を代執行で撤去 和市が雑賀崎で初
和歌山市は19日、老朽化で倒壊の恐れがあり、所有者が分からなくなっている同市雑賀崎の元旅館について、空き家対策特別措置法に基づき自治体が代わりに撤去する「略式代執行」を、市内で初めて開始した。費用は約7000万円で、来年3月中旬までの解体、撤去を目指している。
市によると、撤去される建物は鉄筋コンクリート造り一部木造の3階建てで、延べ床面積937平方㍍。急傾斜地に立地しており、3階の木造部分に入り口があり、下に降りていく構造。建築年は不明で、近隣住民の話では戦前から建っているという。
1975年ごろまで旅館「太公望」として営業していたが、近隣の高台に新館ができて使われなくなり、2014年に運営会社が経営破綻。その後、所有者が死亡し、法定相続人が相続を放棄したため所有者が特定できず、放置されていた。
土砂災害計画区域内に位置し、建物に面した道は住民の生活道路であり、通学路、避難経路にもなっている。18年の台風21号の際、3階の木造部分で壁や屋根の一部が崩れ、半壊状態となり、部材が飛散して近隣の家屋に被害が出た。
近隣住民や地元自治会などから市に撤去の要望が寄せられる中、市は略式代執行の手続きに入り、3月23日に所有者に撤去を命じる「公告」を行ったが、期限の5月22日までに連絡はなく、正式に解体作業に入ることを決めた。
費用約7000万円のうち4割を国、2割を県が補助し、市の負担は4割の約2800万円となっている。
6月19日午前10時半、元旅館前で市建築住宅部の和中潤一部長が略式代執行の開始を宣言。この日は、屋根や壁が崩れた入り口付近、食器や飲料の瓶などが放置されたまま外から見える状態になっている台所など、道路に面した3階の木造部分の前に、業者がバリケードを設置する作業を行った。
今後の作業は、まず木造部分を取り壊し、鉄筋コンクリート部分については、内部の強度などを調べた上で解体方法を決めるとしている。
市空家対策課の木啓江課長は「倒壊すれば多大な被害が出ることが想定される危険な建物であり、略式代執行を決定した。一日も早く地域に安心、安全を届けたいということで、きょうの日を迎えられて良かった。スケジュールは未定の部分も多いが、来年3月中旬を目指して作業を終えたい」と話している。
記事元:わかやま新報
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