
和歌山県紀の川市名手エリアに、少しだけ意外なお店がオープンしました。
その名も「bistronomie palm(ビストロノミー パーム)」。エスコフィエ・フランス料理コンクールで3位受賞経験もあるシェフが、夫婦で営む小さなフレンチレストランです。
名手の地に、フレンチの灯をともすまで

「bistronomie palm」の建っている場所には、祖父が創業したドライブレストラン、祖母や母が引き継いだ喫茶店「パーム」がありました。「何か、この場所でお店をしてほしい」…そう願ってくれていた祖母の急逝をきっかけに、シェフである鹿島さんは一念発起。和歌山県の補助金制度に挑戦し、見事採択されて開業に至りました。

「名手でフレンチ?リスクが高すぎる」と言われることもあったそうですが、今では和歌山市内や御坊から足を運ぶお客さんも少なくありません。
地元・和歌山の素材をふんだんに使いながら、カモやフォアグラ、サーモンなどの特別な食材は本場ヨーロッパから取り寄せ、ワインは世界各国から厳選したものをチョイス。ホテルで20年料理人として経験を積んだつながりを活かしながら、世界と地元を自由につなぐ料理は、華やかさと“優しさ”をまとっています。

2025年5月21日からは、ランチ営業も開始!
ランチは、「Plume(プリュム)」(3960円)・「Iris(イリス)」(5500円)・「Palm(パーム)」(8800円)の3種類。ディナーは、「Bonheur(ボヌール)」(5500円)・「Palm(パーム)」(8800円)・「Soiree(ソワレ)」(11000円)。
今回は、「Palm(パーム)」の一部をご紹介します。
一皿目から、静かに心を奪われる

まず運ばれてきたのは、「軽く燻製したサーモンと姫菜花のブレッセ ハシバミ風味 マスの卵添え」。このお皿に使われている野菜は、無農薬野菜をつくっている農家さんから直接仕入れたもの。シャキッとした歯ざわりがサーモンのコクと香りを引き立てます。マスの卵とカラスミパウダーの塩気が、ひと皿の中に奥行きを与えています。食べるために崩すのが、惜しくなるほどの美しさです。

続いて、にんじんのポタージュ。素材にこだわっている岩出市のパン屋さん「bonte」のパンとともに口に含むと、身体の奥からほどけていくような温もりが広がります。思わず「はぁ…」と息が漏れるような、そんな優しく豊かな旨味があります。
記憶に残るカモ料理

メイン料理は、「マグレ鴨胸肉のロティ フォアグラ添え ジャガイモのピュレと九条葱のエチュベ 赤葡萄酒のソース」。スペイン産のカモ肉に、地元で育てられた九条葱を合わせた一皿。

カモは20年以上のホテル経験を持つシェフが、古くからのつながりを活かして仕入れているもの。ここでしか食べられない特別な食材を、フォアグラとともに、飾り立てることなくシンプルに仕上げています。
噛むたびに肉の旨みが口いっぱいに広がり、マッシュポテトがそのコクを優しく包み込みます。九条葱の香りがふわりと抜けて、あと味に静かな感動が残る。…それがあまりに心地よくて、「口に残る旨味を流したくない」と思い、水を飲むのさえ惜しくなるほどでした。
食後のデザートはヌガーグラッセ

デザートには、旬の和歌山県産みかんを使った「ヌガーグラッセ 紀州みかんのムース」。季節によって桃などに変える予定とのこと。香ばしさや食感のたまらないヌガーグラッセに、紀州みかんのほどよい酸味と甘みがマッチします。

紅茶は香りを試してから選べる「ボックススタイル」。ノンカフェインの種類も多く、食後まで心地よく過ごせる気づかいが感じられます。

今回選んだのは、「ワイルドベリーハイビスカス」。透き通った赤色が美しい紅茶です。濃厚な香りと、心地いい酸味が、デザートの甘味を引き立ててくれますよ。

「bistronomie palm」は予約必須。ホームページやインスタグラムのDM、電話で受け付けており、返信をもって予約成立です。前日までの予約を推奨しており、当日予約の場合は電話にて連絡を。8人以上の利用で貸切も可能なので、家族三世代で訪れる方もいるそう。
ひと口ごとにじわじわとやってくる「美味しさの波」が、いつの間にか心を満たしてくれます。静かな幸せを感じる時間を、名手の地で過ごしてみませんか。
名称 | bistronomie palm(ビストロノミー パーム) |
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所在地 | 和歌山県紀の川市名手西野363 ![]() |
電話番号 | 0736-60-8497 |
営業時間 | ランチ11:30~、ディナー17:30~ |
定休日 | 月・火曜(祝日の場合は営業) |
駐車場 | あり(6台) |
web | http://bistronomiepalm.com |
@bistronomie_palm_2025 |
パン・スイーツ狂いの和歌山取材ライター。パンや甘いモノをこよなく愛しています。6歳の子どもがいるシンママで、ロゴデザイナーとしても活動中。人の想いを深くお伺いすることが得意。食べ物が美味しそうに見える体型をキープしているため、取材中は店主さんが心を開いて話してくれます。