
研究テーマは食! 和歌山の「おいしい研究所」を調査
イチオシの記事
世界が注目するノーベル賞。2025年は、生理学・医学賞と化学賞の両部門で日本人研究者が受賞し、国内に明るい話題をもたらしました。そんな“研究熱”が高まるなか、和歌山にも、日々「食の可能性」を追い続けるユニークな研究者たちがいます。彼らが取り組む意外なテーマとは?
目次
和歌山発のブランド牛
紀州和華牛研究所
(和歌山市)
和歌山県と近畿大学が
共同開発
SDGsな県産和牛が
世界のWAGYUに

和歌山県と近畿大学が共同開発した「紀州和華牛(わかうし)」を、しゃぶしゃぶで思う存分いただける「紀州和華牛研究所」。「和歌山県産ブランドを盛り上げるため、2022年に開店しました」と、マネジャーの原大造さんは話します。「研究所という名前が生産者や卸業を連想させるみたいで、『取引したい』と問い合わせが入ることも(笑)」とも。

紀州和華牛は脂身が少ない赤身肉で、ビタミンが豊富。しゃぶしゃぶなら、さらに余分な脂を落とせるので、肉本来の味をヘルシーに堪能できるのも人気の理由。「あぶりずし」など、各部位の特徴を生かした料理も提供しています。「私のおすすめはローストビーフ。上質な肉のうま味がしっかり出ます」と原さん。忘新年会シーズンに向けて新メニューを企画中というから、今から年末年始が楽しみ!

2019年のブランド化以来、紀州和華牛の名前は徐々に知れ渡り、また、食品ロスの減少に取り組んだサステナブルな飼育が、外務省の海外向けサイトで紹介されていることもあって、和歌山県外や海外のお客さんが増えているそう。
和歌山発の和牛が、世界のWAGYU(ワギュー)になる日も遠くないかも。
| 名称 | 紀州和華牛研究所 |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県和歌山市太田1-1-12 1階 |
| 電話番号 | 073-488-9777 |
| 営業時間 | 17:00~23:00(OS22:30) ※土・日曜・祝日と1/2・1/3は11:00~23:00(OS22:30) |
| 定休日 | 火曜、12/31・1/1 |
| 駐車場 | あり |
| web | https://kishuwakaushikenkyusho.owst.jp/ |
| @wakaushi_lab |

健康研究所
鉄板ダイニングBENK
(和歌山市)
鉄と酵素とミネラルの力
パワーみなぎる
ステーキコース

「人は食べ物でできている」。この言葉を掲げる「健康研究所・鉄板ダイニングBENK(ベンケイ)」は単なるステーキ専門店ではありません。オーナーシェフ・諏訪智也さんが、料理を通して“食と健康”の関係を真剣に探究する場でもあるのです。
研究の原点は子どもさんの体調不良。めまいなどで、朝起きられなくなり、起立性調節障害と診断されたことがきっかけだそう。「薬ではなく食事から改善したい。鉄・酵素・ミネラルを取り入れた食に挑戦し、その効果を徹底的に調べ続けてきました」と諏訪さん。
同店のステーキコースは、肉・魚・野菜・米の栄養バランスをベースに、鉄と酵素、ミネラルをしっかり補える構成。仕上げにはコーヒーではなく鉄窯で沸かした湯で入れたお茶を提供。
研究を始めて7年、子どもが健康を取り戻した今、「ステーキを食べても胃もたれしない」という、お客さんの声が集まるたび、研究の成果を実感しているといいます。BENKの一皿は、ただのごちそうではなく、未来の自分の体を作る食事です。
| 名称 | 健康研究所・鉄板ダイニング BENK(ベンケイ) |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山市内原876-1 |
| 電話番号 | 073-448-3337 |
| 営業時間 | ランチ11:30~14:30(OS14:00)、カフェ14:00~21:00、ディナー18:00~22:00(OS21:30) |
| 定休日 | 無休 |
| 駐車場 | あり |
進化し続けるラーメン
中華そば研究所まるけん
(和歌山市)
麺も具材も好きなだけ
自分好みにカスタマイズ

店主・宮本征宗さんの名刺に書かれている肩書は“所長”。店名を研究所にしたのは、「生存競争の激しい業界で生き残るために、常に探究心を持って、研究していこう」との熱い思いから。
「子どものころからラーメンが大好き。将来はラーメン屋になりたい、と思っていた」と話す宮本さん。地元和歌山の有名店やフランチャイズ店で修業を重ね、唯一無二の味を追求。2018年に自分の店を開き、「鬼の肉そば」「中華そば」「鬼のまぜそば」(各880円~)の3つのメニューで、麺通を魅了します。

自家製のかえし(スープのたれ)は、ミリリットル単位まできっちり守り、ぶれない味を提供。つぎ足しのだしによる豊潤なスープに、製麺所で特注した麺がよく絡みます。「好きなだけ食べてもらいたい」と、麺の太さや、麺・具材の量を選べるカスタム制度も好評。「最高で麺13増し、肉13増し、卵3つ入りの総重量4kg以上を汁まで飲んだツワモノがいました」と宮本所長。

2018年に放映された関西テレビ『よ~いドン!』で、“となりの人間国宝さん”に認定された宮本さん。「まだまぜそばを考案中でしたが、タレントの月亭八光さんに『はよ、つくって出して』と言われて、急いでメニュー化しました」とは所長談。
固定客が多く、味の安定感を大切にしつつ、「常連さんが分かるぐらいの微差でマイナーチェンジを重ね、進化し続けるラーメンを」と、所長の飽くなき挑戦は続きます。
| 名称 | 中華そば研究所 まるけん |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県和歌山市手平5-8-19 |
| 電話番号 | 073-425-3150 |
| 営業時間 | 11:00 ~ 14:30 (OS14:00)、17:00 ~ 21:30 (OS21:00) ※材料が無くなり次第終了 |
| 定休日 | 日曜、月曜の昼 |
| 駐車場 | あり |
| web | https://twitter.com/maruken_maruken |

農と食への関心から
薬剤師が生みだした
ピクルス研究所
(和歌山市)
体にも環境にもやさしい保存食を
調剤薬局で販売

調剤薬局内に、おしゃれにディスプレイされるピクルス。えっ!? ピクルス? 作っているのは、「きのくに薬局」の代表で、薬剤師の瀧一洋さんです。農と食に関心があり、「地場の野菜を使った食品を作れないか」と考えた瀧さん。たどり着いたのが、旬の野菜を無駄なく生かした、健康にも良い保存食、ピクルスでした。
「酢との組み合わせで、体を整える効果も期待できますしね。試作を重ね、構想すること1年以上。2025年5月から店頭に置けるようになりました」と話します。

瀧さんが手掛けるピクルスは、季節の野菜と無添加にこだわり、保存料や甘味料も使いません。ピクルス液の絶妙な配合、シャキッとした歯応え、そして野菜のうま味と酸味が食欲を増進。「保存食で重要な、食中毒に関する細菌の検査も行っています」と、瀧さん。
豊富なラインアップに迷いますが、瀧さんのおすすめは、「山椒(さんしょう)香るタケノコとこんにゃくのピクルス」(950円)だそうです。和歌山市内のタケノコの産地・山東の春の風物詩を和風ベースのピクルス液に漬け、和歌山県産ぶどう山椒の香りを効かせたニューテイストをぜひ。

薬剤師が調剤薬局で販売するピクルスってだけで、体によさそうですよね。
| 名称 | ピクルス研究所 |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山市藤田15-1 きのくに薬局内 |
| 営業時間 | 9:00~18:00 ※土曜は12:00まで |
| 定休日 | 日曜、祝日 |
| 駐車場 | あり |
江戸前そばを手打ち
健康料理研究所
さらい(有田川町)
窓から見える
山の緑に癒やされながら
江戸の味をつるりと

有田川町の山あいにたたずむそば処。店主の中尾朗(あきら)さんが振る舞うのは、江戸前の二八そばです。
北海道産のそば粉と小麦粉を使った麺は、喉越しのよい1.1mmの細打ち。つゆは関西人の口に合わせ、4種のだし節と昆布の配分を絶妙に調整し、そばの風味をぐんと引き立たせています。

証券会社に勤めていた中尾さんは、「会社員時代に転勤で国内を回り、各地の食文化に感化され、東京で、江戸流のそばの楽しみ方を知りました。関西との味の違いにも驚かされました」と話し、早期退職後、京都の調理師学校に通い、名店「有喜屋(うきや)」でそば作りのいろはを学びます。一方で、生家を3年掛けて自らリノベーション。開店に合わせて故郷に戻りました。

「親の教えや育った環境から、自然食材が体にもたらす健康効果に常に興味がありました。そばの店を開いたのも、その高い栄養価に注目して」と中尾さん。「健康は食にあり」をモットーに、地の食材や国産の調味料にこだわった一品料理も提供しています。
| 名称 | 健康料理研究所 さらい |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県有田郡有田川町谷114-1 |
| 電話番号 | 0737-23-8503 |
| 営業時間 | 11:00~お客さんがいなくなるまで ※夜は予約営業 |
| 定休日 | 不定休 ※インスタで告知 |
| 駐車場 | あり |
| @aridagawa__sarai |
自然の調味料は魔法の粉
スパイスダイニング
LABO(和歌山市)
知れば知るほど奥深い
スパイスをもっと身近に日常の食卓に

和歌山で珍しいスパイス料理店として、2025年3月にオープン。オーナー兼料理人は、飲食店コンサルタントとして、県内で数々のお店を手掛けてきた濵慶太郎さんです。
実は濵さん、以前はスパイスに苦手意識を持っていたそうで。「スパイス=辛いだけ、と思い込んでいたんです」。しかし、料理に深みを加え、多様な効能がある、スパイス遣いの妙に触れ、「試行錯誤しながら、スパイス料理を極めたい」、そんな思いを込めて、店名をLABO(研究所)にしたと打ち明けます。

おすすめは「スパイスチキンカレー」(650円~)。スパイス6種と鶏肉のうま味、トマトの酸味、ヨーグルトのコクが溶け込み、絶品。スパイスラックのコリアンダー、クミン、カルダモン、ターメリック、カイエンペッパーで、自分好みに追いスパイスも。

風味や辛さを調整する楽しさを知れば、スパイスの魅力にはまるはず。
| 名称 | spice dining LABO (スパイスダイニングラボ) |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県和歌山市十番丁48-1 |
| 電話番号 | 050-8884-8465 |
| 営業時間 | 11:30〜14:30(OS14:00)、17:00〜22:00(OS21:30) |
| 定休日 | 不定休 |
| @spice.dining.labo |
「和歌山のおいしい研究所」はいかがでしたか? “研究成果”は店頭で確かめてくださいね。

























和歌山市在住のローカルライター。東京の出版社やニュージーランドの編集プロダクションで勤務後、和歌山に移住。地元メディア会社のエディターを経て、出産を機にフリーに。地域ネタから観光情報まで、在住者ならではの視点で和歌山の魅力を紹介しています。