
和歌山ラーメン誕生物語 ~第6話~「新横浜を席巻する和歌山の味」
イチオシの記事
いまや全国的な知名度を持つ「和歌山ラーメン」。そのブームが生み出された経緯を知る筆者(S.Sat.SD)が、後世に伝えるべく、ロカルわかやまに書き綴る第6話。
第5話までのあらすじ
1998年(平成10年)1月放送のテレビ番組内で「井出商店」(和歌山市)が、日本一の評価を受けた。以後、「和歌山ラーメン」ブームが全国で巻き起こる。同年、新横浜ラーメン博物館広報担当者(武内伸さん)が和歌山で綿密な取材を実施(著者も一部随行)。秋から同館で開催される和歌山ラーメンの特別展の準備が、佳境に入っていた。
第1話は こちら で読めます
第2話は こちら で読めます
第3話は こちら で読めます
第4話は こちら で読めます
第5話は こちら で読めます
新横浜ラーメン博物館に
和歌山のアノ店が期間限定出店
当時の新横浜ラーメン博物館では「新横浜着全国ラーメン紀行」と銘打って、地方の有名店を期間限定で誘致していた。
Horry「それで和歌山ラーメン店を、武内さんは調査していたんですよね」
私「よく知ってるやん」
H「第2話 で書いてますよ」
和歌山の味、中華そば発祥の歴史を調べつくした武内さん。準備が最終段階を迎える中、どの和歌山の店を誘致するか迷いに迷ったという。
私「第3話 にも書いたが、和歌山の中華そばのスープは大きく2つに分かれること(澄んだ醤油味=いわゆる車庫前系と、濁った豚骨醤油味=いわゆる井出系)を解明した武内さん。最初は店舗数も多く、東京のラーメンの味に近い車庫前系のお店の方が関東では受け入れやすいと考えたそうだ」
H「東京のラーメンって町中華で出される透き通ったスープの印象がありますよね。なるほど、車庫前系と似ていますか」
私「熟考の末、和歌山の味を紹介するなら、濁った豚骨醤油の方がインパクトがあるのではないか?との思いに至ったそう。当時、九州系の豚骨ラーメンが首都圏でブームを巻き起こしており、和歌山の豚骨醤油はこの人気の“豚骨”の波に乗れるはず。しかも和歌山は豚骨スープのコクと、和歌山が発祥と言われる醤油ダレの旨さを併せ持っているし…と」

誘致店を「井出商店」に絞った武内さん。私の当時の取材メモによると、テレビで紹介されて多忙を極めていたこともあり、店主の井出紀生さんはなかなか首を縦に振らなかったという。
私「武内さんは説得するにあたり『和歌山の中華そばを全国に知ってもらうために、私たちの神輿(みこし)に乗って欲しい』と話し、結果、和歌山のためになるなら」と頷いてくれたんだって」
H「ドラマのワンシーンみたいですね」
いざ、新横浜へ!
1998年10月1日、新横浜ラーメン博物館に「井出商店」がオープン。また、「どないなんよ和歌山ラーメン」の特別展が館内で開かれることになった。
この歴史的な現場をこの目で見ようと、新横浜までの新幹線の切符を手に入れた私だったが…
H「まさか寝坊⁉」
私「ちゃうちゃう、私が乗った新幹線が静岡県内を走っている際に、大雨の影響でストップしやがった。取材のアポを取っていた新横浜ラーメン博物館に連絡しようにも、えらい田舎で止まったもんだから通じず。あ、隣の人は話している。そうか、私、PHSやったもんな」
H「PHSって、時代を感じさせます」
私「PHSが分からない方はググってください。で、約1時間遅れで新横浜ラーメン博物館に到着。武内さんに遅れたことを詫びると、『いやー、いままでフジテレビとテレビ和歌山さんの取材を受けていまして』とニコニコ顔。痛恨の新幹線の遅れやったわ、フジテレビに映るチャンスを逃した」
H「テレビ和歌山は映らなくて良かったんですか?」
私「まあ…ということで、新横浜で目にした和歌山ラーメンの狂想曲は、第7話に つづく」
H「ここで次号またぎですか!」

私「なんかもう、すごい行列になってた!」
第7話に つづく (近日公開)
【和歌山の一杯】
丸京
1998年(平成10年)の「和歌山ラーメンブーム」時に営業していたお店を、2025年(令和7年)に訪れて食べたレポート。

我々のギョーカイ、平成初期の頃は深夜残業というのはザラ。「校了」という名のゴールを目指し、午後8~9時頃になると「夜食、行こか」と誰からともなく声が上がる。
まだその栄華を誇っていた、ぶらくり丁のやや南。屋台をそのまま店舗に突っ込んだような外観が特徴的だった中華そば店「丸京」に。間違いのない一杯をすする至福の時間。スープを飲み干しホッと一息。「さあもうひと踏ん張りするか」と帰社の途に着く際、「ちょっくら休憩してくるわ」と近所にあったパチンコ店に向かうヤツもいたが…(何のための腹ごしらえや!)
てな約30年前のことを思い出しつつ、すっかりオシャレになった店内で、昔と変わらない味を堪能する。夜食からランチとシチュエーションは変わったが、シンプルなのに奥深さが感じられるスープの優しさにホッと一息。ずずっと食べ進めると、器から○京の印字。「ああ、これやこれ」と微笑みつつ、和歌山の中心地(かつての?)で和歌山を感じた。


| 名称 | 丸京 |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県和歌山市雑賀町120 |
| 電話番号 | 073-423-5754 |
| 営業時間 | 11:00~14:00、16:00~21:00 |
| 定休日 | 木曜 |





















彷徨うEditor。