

和歌山ラーメン誕生物語 ~第2話~ 「真のラーメン王が和歌山に」
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いまや全国的な知名度を持つ「和歌山ラーメン」。そのブームが生み出された経緯を知る筆者(S.Satoh.SD)が、後世に伝えるべく、ロカルわかやまに書き綴る第2話。
第1話のあらすじ
1998年1月、テレビ東京で「TVチャンピオン 日本一うまいラーメン選手権」が放送され、和歌山市の「井出商店」が日本一に輝いた。そのおかげなのか、週末ともなると「井出商店」には県外客を中心に行列が出現。

私の元にも、東京のマスコミから問い合わせが殺到。地元民として、和歌山の中華そばのことをもっと知らなきゃと、食べ歩く毎日が初夏にかけて続いていた…。
第1話は こちら で読めます
真のラーメン王との出会い
ええ加減ラーメンにも飽きてきた1998年初夏。新横浜ラーメン博物館の広報担当という方から電話をもらった。和歌山のラーメンについて調査をしており、遠路はるばる和歌山までやってくるという。で、情報誌の制作に携わっている私と会って、和歌山のラーメン事情を聞きたいと。
「新横浜ラーメン博物館の武内と申します」 差し出された名刺に印字された“武内伸”という名前。その時、私はまだ認識が浅かったのだが、日本のラーメン界では名の通った方だったのである。

福岡出身の武内伸さんは、幼い頃からラーメン好きで、高校2年のときに「春木屋」という東京のラーメン店のおいしさに感動。「向こう10年間にラーメン1000軒を食べ歩くこと、その体験談を本にすること、その印税で城を建てること」を掲げた。
さすがに城を建てることは出来なかったが、ラーメンに関する本の出版と、食破数宣言は実現。テレビ東京の番組「TVチャンピオン 第2回全国ラーメン王選手権」に出場し、2代目ラーメン王に輝いていた。しかも本職が、ラーメンをエンタメにしたテーマパーク「新横浜ラーメン博物館」(以下、ラー博)の広報担当って、私のラーメンの知識なんて足元にも及ばない。
Holly「なかなかの大物の登場ですね」
突然、この和歌山ラーメン物語に参加してきたのが、和歌山リビング新聞社の中で「ロカルわかやま」の制作歴が一番長いHollyママ(以下、H)。私の文章が脱線しがちなので、修復のためのツッコミ役をお願いした。
H「ばかなかの雑な紹介ですね」
私「Hさんの旦那は福岡出身で、結構なラーメン通。今も『山岡屋』のラーメンを食べるためには深夜でも平気…というところから紹介しよか?」
H「さっそく脱線していますよ」
では本筋へ。実は武内さん、和歌山のラーメンの実力を見極めようと、1998年の1月には一度和歌山に来ており、3泊4日の強行軍で、19杯の和歌山のラーメンを胃袋におさめたという。
H「武内さんは、和歌山の味を知りたかっただけ?」
私「いやいや、もっと深い事情があったのだよ」
新横浜ラーメン博物館の野望

オープンしてから30余年、インバウンド効果もあって今も大変賑わっている「ラー博」。関東方面に旅行する機会がありそうなラーメン通さんは、ぜひ。
新横浜ラーメン博物館HP
H「旦那を連れて行ったら、食欲全開で全店制覇しそうです」
私「当時もそういう猛者が全国から殺到していたんで、マンネリにならないために、期間限定で“ご当地ラーメン”を展開し始めていた。第1回が旭川ラーメンで、2回目の企画展となる1998年秋から半年間は“和歌山ラーメン”をテーマに準備中。それで武内さんは、いろんな調査をすべく、1998年初頭から和歌山に潜入していたのだよ」
武内さんの任務のひとつは、日本一と紹介された「井出商店」にラー博への出店要請をすること。そして、和歌山のラーメンの歴史を調べ、ラー博でパネル展を開くこと。
H「さすが、博物館ですね」
私「武内さんは私に会うなり、『和歌山ラーメンの歴史を教えてほしい』と言ってきたんよ。これは困った、何も知らんし。ていうかその前に、第1話でも書いたけど、我々が親しんでいる地元の中華そばのことを、関東の人は『和歌山ラーメン』と呼んでいることに驚いたわ。そんなん当時、和歌山じゃ誰も言うてないし」
H「で、何も知らないSさんは、どう答えたのですか?」
私「んー、それは第3話で」
第3話へ つづく(近日公開)
【和歌山の一杯】
「正善(まさよし)」の中華そば

新しい県道粉河加太線沿い、おしゃれな建物。もともとは古い方の県道沿いに店を構えていたが、2018年にこちらに移転。店内は明るく広く、女子1人でも気軽に入れる雰囲気。店内の両端にカウンター席、真ん中にテーブル席とスペースに無駄がなく、繁盛店だが回転は速く、サクッと和歌山の味が堪能できる。

定番の「中華そば」をオーダー。いやもう、間違いのない味。豚骨醤油のスープは適度なトロミがあって程よい濃さで、クセがなく万民受け。細麺とよく絡み、一気にいってしまう。「生卵入り」という和歌山の他店ではあまり見かけない中華そばもあり、スープがよりマイルドになっている。ぜひ体験あれ。
名称 | 正善(まさよし) |
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所在地 | 和歌山県和歌山市直川591-1 ![]() |
電話番号 | 073-461-1739 |
営業時間 | 11:00~21:00 |
定休日 | 木曜、第3水曜 |
駐車場 | あり |
彷徨うEditor。昭和末期、新宿スタジオALTAから全国ネット放送出演3回、ツッコミ担当。20世紀末、和歌山ラーメンブーム仕掛け人の1人。